イヤホン・ヘッドホン・プレイヤーなどを買って「もっといい音にできないのか」「他にできることはないか」と考えたときに、必ず行きつくのが「バランス接続」です。調べると多くの製品で採用されており、「バランス接続」も一般的な方法になってきました。
そんな中、いざ試してみたくてもどうすればいいのか、そもそも何が違うのか、根本原理を知らずに環境を整えるのは困難に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回こちらの記事を読んでおけば、一通りの原理と仕組みが理解できると思います。
結論、有線で聴くなら「4.4mm 5極端子」で揃えて聴き比べしてみよう!
バランスケーブルの役割
元々は業務規格
音響環境の中で音質に大きな悪影響を受けるものの一つに、マイクケーブルがあります。マイクの信号は非常に微弱であり、マイクケーブルを通る際に外的要因のノイズにさらされます。
特に、マイクからミキシングコンソールまでの距離が離れれば離れるほど、その影響はさらに大きくなります。ドームのような広い会場でアナログケーブルをそのまま伸ばした場合、ケーブルの長さは数百メートルにも及びます。
静電気や電源ケーブルの干渉を受けると、信号は使い物にならなくなります。そこで使用されるのが「バランスケーブル」です。
バランスケーブルはホット、コールド、グランドからなるツイストペア構造(複数のケーブルがツイストされている)を持ち、ノイズが混入しても受信側で信号を反転して合成することでノイズを打ち消します。また、信号が2倍に強化され、安定した信号を伝送することが可能になります。
上記の使用方法でのメリットは、アンプで増幅された電圧の十分に高い状態の信号が流れているイヤホンやヘッドホン、スピーカーのケーブルでは外的ノイズが混入しても影響がほぼないため、本来バランスケーブルは必要ではありません。
オーディオにおけるバランス接続
オーディオでバランス接続をする主な恩恵は、以下の2点です。
- 「出力が増す」
バランス接続を行う際、LR接続端子には独立した「+−」が存在します。つまり、「L+、L−、R+、R−」が接続され、計4つのアンプで駆動する仕組みになるため、各チャンネルが約半分の力で動きます。これにより、出力が増加し、より力強い音を楽しむことができます。
- 「クロストークの軽減」
クロストークとは、アンバランス接続する際に「L+、R+、グランド(全体)」でLR間の信号の導線が交差する地点が存在し、LRの信号が混ざることを指します。バランス接続では、LRの導線が独立しているため、信号が混ざりにくくなっています。これにより、音の分離感が向上し、よりクリアで純粋な音質を楽しむことができます。
上記2点のメリットから音質にも影響が出ます。
出力が増し、音に力強さとクリアさが向上。さらにクロストークが軽減され、空間が広がり表現が豊かになります。
一概に「バランス接続=音がいい」にはなりませんが、仕組み上音質向上につながる可能性が高いです。
特にオーディオにおける「音がいい」は好みに左右される面が大きいので、より好みになるか聴き比べを推奨します。
端子の規格
バランス接続を試してみたい!最初のハードルになるのが「端子の規格」です。
イヤホン、ヘッドホン、プレイヤー、アンプなど、バランス接続をしたいデバイスが対応しているか、対応していたら何が使えるのかが重要です。
まず、主にバランス接続をする際に使われてきた端子の種類は次の通りです:「φ2.5 4極」、「φ2.5 2極×2」、「4ピン角型コネクタ」、「4ピンXLR」、「3ピンXLR×2」、「φ3.5ステレオミニプラグ×2」、「φ3.5 4極」、「4ピンminiXLR」、「3ピンminiXLR×2」……たくさんありますね。
所有しているデバイスがバランス接続に対応している場合は、各端子を合わせれば基本的にはバランス接続が可能です。
これからバランス接続を試したい、導入したい場合は「4.4mm 5極」を選ぶと良いでしょう。
「JEITA規格 RC-8141C 4.4mm 5極」は、先端からアサインが「L+/L-/R+/R-/GND」で構成されるプラグ径が4.4mmの5極端子で、比較的新しい規格です。
バランス接続がオーディオに普及する際、各社が独自規格で製品化を進めたため、端子の種類が乱立しました。しかし、2016年3月に一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が音楽鑑賞用ヘッドホンの規格「RC-8141C」を改正し、新たに附属書として「ヘッドホン用バランス接続コネクタ」を規定しました。
以来、ほぼすべてのオーディオのバランス端子が4.4mm 5極を採用し、統一されつつあります。今後発売される製品も4.4mm 5極が採用される可能性が高いので、互換性と拡張性に優れています。
バランス対応のイヤホンとは
「バランス接続に対応したイヤホンはありますか?」
A: リケーブルができればバランス接続が可能です。
元々バランス接続ができるモデルもわずかに存在しますが、選択肢が非常に少ないため、基本的にはリケーブル対応イヤホンに加えてバランスケーブルを別途購入するのが主流です。
イヤホン本体にはバランス対応・非対応はなく、プレイヤー側のバランス再生を受け取るためのケーブルの仕組みが必要になります。そのため、リケーブルできないイヤホンに関してはプラグ端子を改造して付け替えない限り、バランスでの再生はできません。つまり、変換プラグなどでアンバランスからバランスに変換することは物理的に不可能です。
※一部のイヤホンには、分岐時点でケーブルの芯数を絞っているモデルもあるため、改造すれば必ずバランス接続ができるわけではありません。 ※例外として、変換プラグの中にはケーブル自体にプラグを付け替える仕様で、配線ごとバランスに変えることができるものもあります。
バランス再生機器
これまでバランスの仕組みとイヤホンとケーブルの関係性を説明しましたが、再生側がバランス駆動であることも最低条件になります。
バランス端子搭載のプレイヤー
現在多くの音楽プレイヤーには、「4.4mm5極」のバランス端子が搭載されていることが標準になってきています。
SONY (ソニー)NW-ZX707 C
もちろんバランス端子のみではなく、一般的な3.5㎜アンバランスの端子も搭載されているので、普段お使いのイヤホンをそのまま使用もできます。
バランス端子搭載のスティックDAC
FIIO (フィーオ)KA17
スマートフォンなどからも、こちらを繋げるだけでバランス再生が可能になります。持ち運びにも軽量かつコンパクトなサイズで苦になりません。自宅ではPCにも繋げられるのでPCオーディオ環境としても利用ができます。
まとめ
バランス接続を導入することで、オーディオ体験は一段と向上します。バランス接続による高出力感は、音に力強さとクリアさを加えます。さらに、クロストークの軽減により、音の空間表現が豊かになり、より広がりを感じることができます。特に音質にこだわるオーディオファンには非常に魅力的です。
ポータブルオーディオにバランス接続が一般的になってから、多くの変革がありました。特に「4.4mm 5極」の規格が登場してからは、多くのメーカーで採用され、業界全体で盛り上がりを見せています。
専門用語の「バランス」という響きにハードルを感じるかもしれませんが、こちらの記事を読むことで理解が深まり、対応モデルを探しやすくなったと思います。
総じて、オーディオを突き詰めるのであれば、バランス接続を試す価値は十分にあります。音質の違いを実感し、より深い音楽の世界に没入するために、ぜひバランス接続を取り入れてみてください。これまで聴いてきた音楽が、新たな魅力を持って響くことでしょう。